コロナ禍における中小企業への影響・特徴・対策〜ポスト・コロナ禍の経営⑤


ウィズコロナの値上げを考える

1 コロナと値上げ
 現在の状況をコロナの前と比較すると、いろいろと様変わりしていますが、その一つが物価の上昇だろうと思います。その原因は業種業態により、いろいろあると思いますが、原材料費の高騰、物流コストの上昇、人件費の高止まりによるといわれています。
 実感的な話でいうと、私は、昼食は外食することが多いのですが、千円を下回ることは少なくなっています。これは、食事やコーヒーを提供する側も料金を支払う側もこれを許容しているということでしょう。
 飲食業ばかりではなく、値上がりのシーズンが始まっています。日経新聞に、次のような記事が載っています。

『値上げラッシュ、価格はどうなる?』
原材料価格や物流費の高騰、円安などに直面する企業の値上げが止まらない。動きは食品・生活用品メーカーや外食チェーン、コンビニエンスストアなどで広がっている。企業が値上げを表明している主な品目をまとめた。日経POS(販売時点情報管理)情報を分析すると、過去の値上げ局面以上に今回は小売価格の上昇傾向も見て取れる。
(日経新聞2022年10月 電子版より抜粋)

 値上げに関して「うーん」と頭を抱えているのは収入の上昇していかない消費者ばかりではありません。経営者もまた悩んでいます。
 私がある老舗ラーメン屋で注文していると、隣のお客が「また値上げかよ」と言いました。すると、湯切りしていた親父さんがくるっと振り返って、「別に俺だって上げたくて上げてるわけじゃねえよ」。
 これが経営者の本音でしょう。このコラムでは経営者側から見た値上げについて考えたいと思います。

2 値決めの方法
 そもそも値段はどうやって決めるのでしょうか。経営学のテキストなどを見ると、次のような方法が書いてあります。
・原価から考える(原価に適切な利益をのせる方法)
・市場から考える(周りのお店を参考にする方法)
・利益率から考える(どのくらいの利益をとらなければならないかから考える方法)
等などです。最近は、AIを使って商品の値段を決める企業も現れていると言います。
 しかし、私はそんな理論的な方程式で値決めしている社長や店主に出会ったことはありません。むしろ社長の経営者としての肌感覚のようなもので決めているのでしょう(その背後に理論的裏付けはあるにしても)。
 その感覚は、値上げをした分が収益として入ってくるならば上げたい、しかし、値上げをしてお客が離れては元も子もない、という二つの感情の間を揺れているのではないでしょうか。
 私は、多くの企業にとって、いま、値上げをする絶好のチャンスだと思います。思えば、日本は長い間値上げをしないでやってきました。そのため、上記の理論などから見て適正な価格はわかっていても、それを下回っている状態で頑張ってきたように思います。感情としては、値上げに対する恐怖心に縛られていたように思います。しかし、ウィズコロナ時代の物価上昇は、その原因が一経営者の努力でどうなるものではありません。消費者もそこは理解しています。つまり消費者マインドは変わったのです。
 さあ、思い切って適正価格を打ち出しましょう。

3 値上げの方法
 しかし、値上げをするにしても、ある程度のセオリーと定跡があります。そのうちいくつかを挙げましょう。ご自分の会社・お店に応用できるものは取り入れてください。
(1)お客様に比べられないようにする
 同じ商品が、1,000円と1,500円で売られていたときに、後者を選ぶ人はいません。値上げは時期こそ異なりますが、これと同じことです。したがって、値上げは「新製品のイメージ」を作ることが必要です。パッケージを変え、ネーミングを変えるなどしてもよいと思います。
(2)商品群全体としての値上げを考える
 普通のラーメンのほかに高級なラーメンができるのであれば、後者は本当の新製品として、適正価格で提供することができます。その際、前者は値上げしなくても、全体として値上げしたことになりますし、時機を見て前者も値上げしやすくなります。
(3)値上げ幅を慎重に考える
 値上げする場合、それによる一定のお客離れは覚悟しなければなりません。売上は、「顧客数×客単価」ですから、売上が減らないような値上げ幅が必要です。この読みは結構難しい。しかし一つ私の感覚的なアドバイスとして、少しでも値上げを行うで、客数は減ることを覚悟して、それを前提に値上げ幅を決めた方がよいと思います。固定客は値上げ幅が大きくても逃げたりしないものです。

4 値上げと同時に考えること
 前述のように私は、多くの事業者が勇気をもって値上げをすべきだと思いますが、その際それと並行して肝に銘じなければならないことがあります。
 それは自社及びその商品のブランド化です。わが社の商品は、他にない商品でありサービスなのだということをはっきり打ち出すことが大切です。それは探せば必ず見つかります。
 値上げがそのチャンスとなることが祈っています。
            


文責 河合史門