コラム:ポストコロナ時代のリーダーシップ

〜ポスト・コロナ禍の経営⑥〜

1.コロナによる変化
 2022年12月現在、第8波を迎えている新型コロナウイルス感染症は、企業活動に多大な影響を与えている。特に影響が大きいものとして、テレワークの増加や営業時間の変化、感染症対策や取引先の変化などが挙げられる。
これらの環境変化はリーダーシップに求められる能力にも変化をもたらしている。
環境変化の一例としてテレワークを挙げると、直接会うよりもコミュニケーションが取りにくく、チーム内で温度差が生まれやすい。また時間管理や業務管理も困難さが増している。一方、通勤時間減少による働く側の負担減少、チームの運営コスト削減など、良い面も見える。
コロナ禍におけるリーダーシップ発揮の一例として、企業ではないが、海外の女性大統領の思考と決断力が度々賞賛を受けている。これは彼女らリーダーの変化への対応力と決断力の高さによるところが大きいからといえる。

2.リーダーシップの原則
 新しい変化の中で成果を上げるリーダーシップはどのようなものだろうか。読み解くヒントとして、現在に残るリーダーシップ理論の代表的なものをいくつか、ご紹介する。

 ① 行動理論:優れたリーダーには共通する行動原理があるという仮説検証を実施した結果、
  行動には「目標達成や成果への行動」、「チームを導き人間関係を円滑にする行動」という2つの原理が
  重要であるとしている。(代表的な理論:PM理論、マネジリアルグリッド論)

 ② 条件適合理論:全ての環境・条件に最もよい成果を出し得るリーダーの行動はなく、
  時代や環境の変化に適合した行動こそが必要と示唆している。
 (代表的な理論:フィードラー理論、パス・ゴール理論)

 ③ シチュエーショナル・リーダーシップ理論:部下の発達度合いに合わせて
  指示、説得、参加、委任の行動を選択する必要があることを提唱している。

 ④ 交換・交流理論:リーダーとフォロワーの交換による関係の成立ちを分析した結果、
  リーダーの指示に従った行動、労働力提供に対する物的報酬や心理的快感の成り立ちが
  両者関係の維持に必要としている。(代表的な理論:交換・交流理論、信頼性蓄積理論)

この他にも多くのリーダーシップ理論があるが、参考にしていただければと思う。

3.ポスト・コロナ時代に求められるリーダーシップ
 これらの理論は新しい変化が起きているコロナ禍でも有効であり、むしろ理論に基づく冷静な判断が求められる状況といえる。現在でも、リーダーに求められる能力は環境に適した方法で、チーム目標を達成し、人間関係の維持・強化を行い、メンバーや部下を導きチーム全体の能力を向上させることである。

環境への対応力でいえば、大きな変化が度々起こるため、適切さに加え、早い決断が求められる。人間関係の維持・強化でいえば、コロナ禍の働き方でも孤立・孤独なメンバーを増やさないことや、チームの求心力を高めることである。筆者の考えでは、このような時にこそオンラインミーティング以外にも、電話など直接会話が出来る方法を見直し、定期的なコミュニケーションを実施することが円滑なチーム運営に効果的だと考える。

4.まとめ
 コロナ禍によりこれまでの直接的なコミュニケーションが減り、メールやチャットツールを使った間接的なコミュニケーションが増えた。ミーティング上では業務上の会話しか行わず、孤独感や疎外感を感じる組織人も多く出ている。リーダーにはこうした状況に合わせたリーダーシップが求められている。
チャット上で指示を出し、部下のWeb上の行動履歴を監視することがリーダーシップではない。環境条件に合わせた方法で、より高い成果の実現に向けてチームを円滑に運営する事がリーダーに求められている。
コロナ禍により生活様式や働き方の変化、需給や取引先の変化など企業を取り巻く環境は変化を続けている。常に置かれている環境を見直し、冷静でスピード感のある決断がポスト・コロナ時代のリーダーシップに求められている。

文責 服部純大