社外取締役の活用
はじめに
2026年4月、ニデック株式会社(旧・日本電産)で第三者委員会の調査報告書が公表されました。その中で、不正会計の根本原因は、経営トップ発の強い業績プレッシャーにあったと指摘されました。本来であれば不正を発見・是正すべき内部監査部門や会計監査人(外部の監査法人)、社外取締役が機能していなかったようです。最近では、こうした事件が起きるたびに、社外取締役によるコーポレート・ガバナンスは機能しなかったのか?という論調になります。企業が安定的に成長していくためには、ガバナンス体制がしっかりしている必要があります。
上場企業では、社外取締役の設置が義務付けられ、ガバナンス体制の構築が求められています。では、中小企業は義務付けられていないから、関係ないのでしょうか?答えは、ノーです。本稿では、中小企業でも社外取締役の活用が有効であることを解説します。
1.社外取締役とは
社外取締役とは、取引や資本関係のない社外から迎える取締役のことです。社外取締役は、その会社での業務経験はないので、社内の利害関係や人間関係にとらわれずに業務を遂行することができます。一方、社内で昇格して取締役に就任した取締役は、社内取締役と呼びます。社外取締役には、経営の監視の観点から、弁護士や公認会計士が任命されるケースが多いようです。
2.上場企業で社外取締役設置を義務化する動き
上場企業では、2021年3月施行の改正会社法によって、社外取締役の設置が義務化されました。東証プライム市場などの上場会社には、有価証券上場規程に加えて、コーポレートガバナンス・コードに沿った社外取締役の設置も求められています。具体的には、『プライム市場』の上場会社は取締役の3分の1以上、『スタンダード市場』の上場会社は2名以上の独立社外取締役を選任することが求められます(コーポレートガバナンス・コード 原則4-8)。また上場会社に支配株主がいる場合には、支配株主からの独立性確保に関して、さらに高度の配慮が要求されます。具体的には、プライム市場の上場会社は取締役の過半数、スタンダード市場の上場会社は取締役の3分の1以上、支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を選任することが求められます。このようにして、経営陣に対する監視を強化することで、不祥事などのリスクを低減することが求められています。
3.社外取締役のメリット
社外取締役を設置することで、以下のメリットが期待できます。
①経営陣に対する監視機能を強化
外部人材である社外取締役は、生え抜き経営陣との癒着が生じにくいため、経営陣に対する監視の強化に貢献できる可能性が高いといえます。経営者は、社外取締役に説明のつかない行動を控えることが期待できます。
②自社に足りない経験や専門性を付加
自社に足りない経験や専門性を有する社外取締役を選任すると、経営陣のスキルのバランスが改善し、経営判断の質を向上することが期待できます。
③対外的に経営の透明性をアピール
外部から社外取締役を招くことは、それ自体が対外的に経営の透明性をアピールすることにつながります。社外取締役を招くことで経営の公正性・透明性を高めようとするメッセージが伝わると、株主その他のステークホルダーからの信頼獲得につながります。
4.中小企業で社外取締役を活用しよう
中小企業では、上場企業のような社外取締役設置の義務はありません。だからといって、社外取締役設置を他人事にしてはいけません。
中小企業は、人・モノ・カネが潤沢とは言えません。したがって、弁護士や公認会計士などを社外取締役として招く金銭的余裕は少ないかもしれません。しかし、限られた社内人材だけで外部との競争に勝ち抜けるのか?と考えてみる必要があります。
社内の人材だけだと、偏った視野でしか判断できないケースがあります。柔軟な発想で判断したい場合に、多くの他社事例を知っている専門家に相談するというのも、一つの解決方法になります。専門家には、弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士などがいます。
5.中小企業診断士を活用してみましょう
社外取締役となると、会社の重要な意思決定機関である取締役会のメンバーになります。いきなり社外取締役を依頼するのは危険かもしれません。その場合、まずは、公的制度を利用した専門家派遣で指導を仰ぎ、次に、顧問契約を交わして、日常的な経営指導を依頼してはいかがでしょうか。お互いの人となりを把握でき、より強固な関係で経営指導を受けたい場合に、社外取締役就任を依頼する、という流れです。
| 専門家派遣 ⇒ 顧問契約 ⇒ 社外取締役 |
社長の良き相談相手であるとともに、時には、周囲の役員が言いづらいことを代わりに社長へ注進する、こういう役回りは、日常的に伴走支援していて企業経営者と信頼関係を有する中小企業診断士に適性があると考えられます。中小企業の経営を強化するために、中小企業診断士を活用してみてはいかがでしょうか。
文責 高橋利忠
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