コラム:自社の『ブランド』を見つけ、活かす

~中小企業が生き残るためのブランド力②〜

◆はじめに
 ここ数年、中小企業を取り巻く環境は劇的な変化を続けています。新型コロナウイルス感染症拡大によって行動変容が起き、企業ではリモートワークやDXが進められてきました。加えて2022年からは為替相場の変動やエネルギー価格、物価の上昇など、中小企業経営者にとっては頭の痛いニュースばかりです。そのような厳しい荒波の中を中小企業が生き残るため、どのように自社のブランド力を高め、それを活用していくか、診断士コラムでは定期的にお伝えしてまいります。

◆すべての企業がもっているブランド
 ブランドという言葉を聞くと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。銀座に店舗がある外国製の高級なバッグや化粧品、江戸時代から続く和菓子の銘菓、高級料亭などを思い浮かべるかもしれません。しかし、このように多くの人が知っている名前だけがブランドなのではなく、すべての企業がブランドをもっているのです。

身近な例でいえば、昼食や夕食で選ばれる店、お弁当屋さんなど、毎週のように選ばれて繁盛しているお店はないでしょうか。お客様に「今日はあの店に行こう。あのメニューを注文しよう」と選んでもらい、お店の『売上につながる』独自の価値、それがそのお店にとってのブランドなのです。

具体的な例を以下に紹介します。
・値段の割にボリュームがある (コストリーダーシップ戦略)
・材料が新鮮、調理のひと手間が加わっている (差別化戦略)
・特定の顧客層(若手OL、ガッツリ系など)向けのメニューが充実している、その顧客層に合った店の雰囲気や店員配置となっている (集中戦略)
このようにお店の目指す方向性(戦略)とお客様のニーズの合致が、ブランドを生み出す源泉となっています。

◆ブランドを見つけるには
 では、自社・自店独自のブランドをどのようにして見つければよいのでしょうか。
まず初めにお勧めする手法は、売上分析です。売上はお客様の声なき声です。売上上位20%の商品・サービスで売上の80%を占めていることが多くあります(パレートの法則)。ランチやお弁当であれば、上位の20%のメニューです。その上位20%のメニューと残り80%のメニューを比較することで、お客様の評価している点が見えてきます。

次にお勧めする手法は、自店への評価を実際にお客様に尋ねてみることです。
「このお店(商品・サービス)の気に入っている(良い、他の店より優れている)ところはどこですか」
「毎週のように通っていただくのはどうしてですか」
「(新たに)どんなメニュー、お弁当があったらいいですか(欲しいですか)」

大切なことはお客様目線で、お客様価値ファーストで考えることです。自分の視点でこれがよいとの思い込みは、実際にはお客様にとってのブランドではないこともよくあります。

◆ブランディングや新商品開発につなげる
 次に行うことはブランディングです。お客様視点でのブランドを把握したら、それに沿って自社のこだわり、例えば食材の選び方なり、調理方法なりを開発した後、訴求することが考えられます。ブランドとして認識したものを、その内容やその背景にあるお客様の想いと自社自店の取組を言語化する、そしてその内容をお客様に発信することです。ブランドの背景にある自社・自店の取組や商品に込めた価値を認識してもらうことが求められます。ブランディングと並行して、新商品・新サービスの開発を行いましょう。

  • 新商品・サービス
    新商品、新サービスといっても難しく考える必要はありません。先ほどのお弁当屋さんの例であれば、お客様の声を基に人気のお惣菜のサイズを変えたり、人気のお総菜を組み合わせたセットを作る、などが考えられます。もう一品欲しいのだけれど少量でいいとか、違うものを食べてみたいということはよくあります。
  • スペシャル/プレミアム商品
    人気の食材にさらにひと手間を加えた少し値段の高い、スペシャル/プレミアム商品を提供するという手法も多くのお店で行われています。例えば、お弁当屋さんの例でいえば、看板メニューがから揚げとした場合、部位が希少で美味しさの増すスペシャルから揚げを提供することです。お店にとっても単価アップ、お客様にとっても仕事で頑張った自分に少し奮発してご褒美となれば、お客様もお店も、相互に善しの関係になります。

◆経営に活かす、金融機関との取引につなげる
 最後に経営に活かしましょう。ブランドを見つけたらブランディングや新商品開発で、売上や利益の増加に繋げたり、必要な資金を金融機関から借り入れて事業の拡大に繋げましょう。

 ここまで読んでいただいて、そうだなと思う点、ただ自分だけではちょっとできない、どうすればいいか分からないと思う方もいるかもしれません。そのようなときには、ぜひ文京区中小企業経営協会にお問合せください。中小企業診断士がお手伝いをします。多様な経験を有する中小企業診断士が在籍しており、御社・お店のお力になりたいと日々研鑽に努めています。

文責 伊藤英幸