コラム:中小企業白書に見るコロナ禍で戦う中小企業の現状

〜ポスト・コロナ禍の経営①〜

◆はじめに
 中小企業白書とは、中小企業庁が前年の中小企業の動向を調査分析し、毎年5月に結果を公表した白書である。2021年版白書では、新型コロナ感染症による消費者意識・行動の変化、小規模事業者の対応について分析を行っている。

白書に記載された消費者ライフサイクルの変化を冷静に分析し、自社における顧客ニーズの変化に、いかに活用するかが経営上重要と考える。

1 個人消費の状況について 
 内閣府の「消費総合指数」は、2020年3月に低下した後、4月に緊急事態宣言が発出された中で大幅に低下した。緊急事態宣言が段階的に解除された5月を底に上昇に転じたものの、11月以降再び低下しており、個人消費は足元では弱含みで推移している(第1-1-2図)。

2 倒産件数
 中小企業向けの貸出金の推移について検証すると、2012年まではおおむね横ばいで推移してきた。その後2013年以降は右肩上がりで推移し、2020年末まで堅調に371.6兆円まで増加した(第1-1-35図)。

 我が国の倒産件数は、2009年以降は減少傾向で推移してきた中で、特に2020年は資金繰り支援策などの金融政策の効果もあり、30年ぶりに8,000件を下回る水準(7,773件)となった(第1-1-36図)。

3 雇用・求人倍率
 完全失業率は、2009年中頃をピークに長期的に低下傾向で推移してきたが、2020年に入ると上昇に転じた。足元では完全失業率が低下傾向に転じる動きが見られる。また、有効求人倍率は2020年に入り、大きく低下したが、足元では上昇に転じる動きが見られる(第1-1-48図)。

4 ライフスタイルの変化
 コロナ禍により、健康に対する関心が高まり、テレワークが増加した。それに伴い、外出先の移動範囲の縮小化、加えてデジタルコンテンツの利用増がライフスタイルの変化として紹介されている。

〇健康に関心
 「ステイホーム・コロナ禍」を機に、より健康意識の高まった消費者が半数近く存在すると白書は述べている(第2-1-25図)。

〇テレワーク
 感染症の流行により広まった働き方の一つにテレワークが上げられる。人の移動を抑制するためテレワークが推奨された結果、働き方に変化が起きた(第2-1-28図)。

東京23区のテレワーク実施率を見ると、感染症流行前の2019年12月時点で17.8%(全国10.3%)が、2020年5月時点48.4%(全国27.7%)に上昇した。

2020年12月時点で42.8%(全国21.5%)に上り、東京23区や東京圏では他の地域と比較して高い実施率であることが分かる。

テレワークを実施した者のうちで、今後のテレワークの実施希望状況を見ると、「完全にテレワークを希望(20.0%)」、「テレワーク中心(業務の50%以上)」で、「定期的に出勤を希望(32.9%)」、「出勤中心(業務の50%以上を出勤)」で、定期的にテレワーク利用を希望(17.2%)」と回答している。これら3回答の合計は、約70%であり、テレワークを継続したいと考える者が7割に及ぶことが判明する(第2-1-29図)。

〇外出先範囲の縮小
 感染症流行前後における消費者の外出先の変化を分析すると「映画鑑賞・コンサート・スポーツジム等の趣味・娯楽」や「外食」を中心に、いずれの項目においても、「自宅周辺への外出」が増加し、自宅から離れた「都心・中心市街地への外出」は減少したことが分かる(第2-1-30図)。

〇ネットショッピング・デジタルコンテンツの利用
 在宅時間の増加に伴う変化として、消費者におけるオンラインツール利用の増加が上げられる。

ネットショッピングをする世帯割合を見ると、2019年にかけてその割合は増加傾向にあったが、新型コロナが流行した2020年4月(47.3%)以降、前年までと比較して大幅に増加した(2019年4月で42.2%)(第2-1-31図)。

デジタルコンテンツ(電子書籍やダウンロード版の音楽・映像アプリなど)の消費額の推移を見ると、新型コロナが流行した2020年4月以降、前年までと比較してデジタルコンテンツの選択傾向が大幅に増加していることが分かる(第2-1-32図)。

以上

文責 原 知世

出典元 中小企業庁『中小企業白書』