コラム:コロナ禍と事業継続計画(BCP)

〜ポスト・コロナ禍の経営②〜

◆新型コロナウイルス感染症拡大の影響
 コロナ感染症の影響を受けて苦戦する中小企業は、飲食業、イベント業、サービス業、小売業、運送業をはじめ製造業、卸売業等全産業におよんでいる。
その多くは、数次にわたる緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置により営業時間短縮等を余儀なくされ、売上が90%以上減少したところも少なくない。

◆コロナ感染症が中小企業に与えた特徴
 地震や風水害等の災害のように設備、機械に大きな損傷は発生しないが、人の行動制限により、業務遂行に支障が生じ、生産減、売上減、情報の混乱が起きる。収束が見えにくく、被害の大きさは、分かりにくい。また、先の見通しが立てにくく、繰り返し影響がでて、長期にわたり影響するという特徴がある。

①  従業員の感染により出社率の低下により人員確保に追われる。
②  設備へ被害はないが、業務遂行方法を工夫しないと持ちこたえられない。(一人二役となる多能工化への準備が必要)
③  営業時間短縮等に耐えられる運転資金が必要となる。(最低3ヶ月と論じられたこともあったが、すでに、コロナ感染症の影響は2年を超える実態となっている。)
④  情報網は維持されるが、混乱防止とセキュリティ対策が必要となる。
⑤  地域が広く全世界、全国に拡大し地域分散によるリスク分散ができない。
⑥  事態が段階的に進行し、復旧開始のポイントを見つけづらい。
⑦  繰り返し影響がでるため、一時的な対策より、状況に合わせた対応が求められる。

◆中小企業の日常的に実施するコロナ感染症対応策
・社内業務での注意事項
①  従業員同士の接触機会を減らす。
②  来訪者管理の徹底、マスク消毒のほか発熱の場合の制限を告知する。
③  通勤方法の変更等柔軟な業務体制構築、手洗いの徹底、消毒、換気サイクルのルール化や徹底
④  外出や対面での会議を控える。
⑤  従業員の健康管理の徹底
⑥  消毒薬等の備蓄確保。(マスク、アルコール、石鹸、うがい液、ゴム手袋)

◆中小企業としての事業継続計画、BCP(※1)の作成による対応
①  BCP策定は、基本方針、コアとなる商品・サービスの検討、被害状況の確認、事前対策実施、緊急時の体制、BCPの定着と見直しが基本となる。
②  人員確保のため検温をはじめとする健康管理、3密対策、会議のリモート化、退社後の行動管理まで踏み込んだ対策が必要となる。
③  コア業務が影響した場合の対策を検討する。
④  中小企業の実態にもよるが、極力テレワークを推進する。
⑤  金融機関へ経営状況報告と緊急融資への備えのため日常円滑な関係を保持する。
⑥  雇用安定助成金・持続化給付金などの支援施策や各種補助金や各支援機関による感染症対策講習、BCP支援策などの制度や情報を収集する。
⑦  中小企業のBCPの策定には国や各都道府県による情報提供や支援策、BCPマニュアルのテンプレートがあり、積極的に活用する。
⑧  2019年7月に公布、施行された「中小企業強靭化法」により、「事業継続力強化計画」の認定制度が始まり、認定事業者には、政府系金融機関の低利融資や保証保証枠の拡大、税制支援措置、各種補助金の加点措置がある。感染症対策として認定を受けることも検討したい。

◆まとめ
 中小企業は、大企業と違い、立地分散によるリスク回避はできない。また、社長が感染したら、指揮、命令系統に大きな影響が出る。

企業の体力も十分でない。多くの場合、中小企業は、内部留保は十分でない傾向にあり影響を受けた場合には、売上低下、顧客離れが進み、業種によっては従業員離れも起こりうる。これらのリスクをいかに極小化し、取引先との関係が寸断されず、サプライチェーンから離脱することを防止することが中小企業にとって生命線となる。BCP作成(※2)による対応が、ポスト・コロナ禍における中小企業経営に求められる。

                          文責 日比雅之

※1 BCPとは
BCP(ビジネス・コンティニュティ・プランのこと)計画は、災害などの緊急事であっても、事業を存続させるために短時間で最善の行動をするべく、あらかじめ、どのような事態が起こりうるか事前に考え、行動するか決めておき、訓練などを通して備えておく計画のことである。

※2 BCP作成について
BCP作成のご相談は当経営協会に気軽にご相談ください。BCPに詳しい専門家が多く参加しています。

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