中小企業こそすべき“事業計画書の作成”そして“事業計画書の活用”へ
1. はじめに
この度、特定非営利活動法人文京区中小企業経営協会(NPO文京)は2025年3月19日(水曜日)午後18:30に文京シビックセンターにおいて「現役中小企業診断士による事業計画書作成セミナー」を開催しました。
今回の診断士の経営相談コラムは、セミナーに参加できなかった方にも事業計画書の活用についてのノウハウをご確認できるように、セミナーの内容の一部を抜粋の上、案内します。
2. 事業計画書はなぜ必要?
企業が持続的に成長するには、日々の事業活動だけでなく、未来へ向けての投資活動は必要不可欠です。例えば製造業ならば生産性の高い設備投資を行うことで、より短時間により高品質の生産が出来る体制が整います。また清掃業ならば清掃ロボットの導入、飲食店ならば配膳ロボットの導入をすることで人手不足の解消につながる省力化の実現が期待できます。仮に、自己資金のみで設備投資を行うのであれば自社と調達先の二者間で取引は完了します。しかし複数年の会計年度をまたいで減価償却を行うような設備投資を行う際には、その設備が高額であることが予測されるため、外部からの資金調達や補助金による支援を活用するのが一般的です。その時には投資の妥当性を評価者に伝える必要が生じます。その妥当性の伝達には言葉による説明ではなく、事業計画書(融資や補助金申請用の事業計画書)を作成・提出し書面によって説明することとなります。事業計画書を受け取った側は、業績向上に資する設備投資であるか、返済原資が確保できるかなどの妥当性を判断します。当然に事業計画書には実現可能性が高いことが求められるため、作成には多くの手間がかかります。
外部からの協力が得られた事業計画書は、次は計画から実行に段階が変わります。しかし、事業計画と業務実績の差異に対する検証がなされないまま、事業計画書が書庫の隅に埋もれていくことも散見されます。まずは事業計画書の検証を行う企業と検証を行わない企業では、投資効果や人材育成、企業価値の面で差が生ずることに気づいていただきたいと思います。
3. 時系列と事業計画
事業計画書には決まった様式はありません。ただし、外部への提出の際は相手方の審査項目や記載要求事項を漏れなく記入することとなります。時には相手方の指定様式による作成を求められることもあります。どんな要求事項、様式であっても共通するのは、①過去、②現在、③未来と言った時系列視点の存在です。そして、③の未来については、事業計画の目的を「X年後のあるべき姿」とした場合、さらに④X年後に至るまでに継続・達成できる施策の実施という4つ目の時系列が生じます。事業計画とは、その名の通り計画であることから②現状の原因を①過去データから追求し、③X年後のあるべき姿を目指し、④継続・達成できる施策を計画したものです。書面にすることで事業計画書となります。
経営資源を表現するのにヒト・モノ・カネという言葉が有りますが、ヒトという言葉が最初に来ているのは語呂合わせではなく大切なものの順番であると私は解釈しています。そしてヒトの取り合いとなっているほどの人手不足により、経営層はカネの調達(融資)のための事業計画、モノの調達(補助金など)のための事業計画ではなく、X年後のあるべき姿(ヒト・職場)を目指すための側面が重要であることにも気づいてください。
4. ローカルベンチマーク(ロカベン)を使った事業計画
事業計画策定を行う上で抜け漏れが無いフォーマットを活用することは、見える化・共有化が同時に実現することとなります。この手法を意識することでX年後のあるべき姿へのロードマップ化がしやすくなります。
ローカルベンチマーク(略称:ロカベン)とは、企業の経営状態の把握、いわゆる「企業の健康診断」を行うツールです。ロカベンを用いて企業経営の現状や課題を相互に理解することで、当社の経営改善や地域活性化が目指せます。ロカベンは、①お金の情報(財務情報)と、お金以外の情報(非財務情報)の2つで構成されています。作成ツールはオフライン(エクセル)とオンライン(ミラサポ)があります。財務情報は、直近から過去3期分の決算情報を入力することで即座に結果が出力されます。従業員とともに非財務情報を共有する際には、エクセルのロカベンを使ってほしいと考えています。なぜなら、ミラサポへの登録は対話形式で入力できますが、出力される帳票は文字情報となっているため瞬時に共有しにくいためです。これに対し、エクセルのレイアウトは、横断的に展開されており色分けで明確化できる点が優れているためお勧めです。色分けを使うことで、重要課題と通常の項目、事実と希望を明瞭化できるため、見える化と共有化が更に進みます。
ロカベンを利用することで獲得できる効果については、経済産業省のリーフレットによりますと、①会社PRや人材確保、②組織力強化や後継者確保、③経営計画・新事業展開、④金融機関との対話、⑤支援機関との対話や活用方法等が明示されています。ヒト・モノ・カネといった経営資源の有効活用の一環としてロカベンをまずはお試しください。そして、継続してください。そして、全員参加の事業計画を行う組織の強さを実感してください。
5. おわりに
2025年5月末日まで、「現役中小企業診断士による事業計画書作成セミナー」で使用したスライドの資料を無償で提供しております。
ご興味のある方はNPO文京のお問い合わせを通じてご連絡ください。
(文責 渡辺ミコ)
投稿者プロフィール
最新の投稿
診断士の経営相談コラム2025年4月10日中小企業こそすべき“事業計画書の作成”そして“事業計画書の活用”へ
お知らせ2025年3月1日2025/3/19 セミナー開催のお知らせ
診断士の経営相談コラム2025年2月3日創業前・・・よくある「5つ悩み」解決策は?
お知らせ2024年12月22日2025/1/22 セミナー開催のお知らせ