中小企業が事業で活用すべき「商標」の産業財産面で実行すべきこと
〜ブランド価値を守り、育てるための基本戦略〜
ビジネスを継続・成長させるうえで、自社の商品名やサービス名を守る「商標」の重要性は年々高まっています。特に中小企業こそ、早期からの商標戦略が、ブランド価値の維持・模倣被害の防止・取引先の信頼確保につながります。
以下、具体的に、商標の重要性について解説します。
1.なぜ商標が中小企業にとって重要なのか
商標は、企業や商品の「顔」とも言える大切な資産です。顧客の信頼やリピート購入・利用に直結する要素であり、競争力の源になります。模倣やブランド毀損から自社を守るためにも、戦略的な商標管理が必要です。
2.商標の基本知識を押さえる
商標とは、文字・図形・記号・色彩・立体的形状などで構成される、商品やサービスの目印です。商標権は、登録した者(権利者)だけが使用できる独占権です。出願~登録をしなければ、他社に先に取られてしまうリスクがあります。
3.商標戦略「自社のブランドを整理する」
自社のロゴ・屋号・商品サービス名・キャッチフレーズなどを棚卸しして、商標登録すべき要素を洗い出します。登録対象となる商標と、そうでない商標(一般名称や記述的表示)を区別することが大切です。社内外で使用しているすべての名称やロゴをリスト化し、優先順位をつけて検討します。
4.商標の早期出願~登録が必要な理由
商標は「早い者勝ち」です(先願主義)。使用開始前に出願(~登録)をすることが望ましいです。使用中に第三者に先に登録されると、使用を止めなければならない可能性があります。海外進出やEC展開を視野に入れる際は、権利は各国独立であるため、海外での権利取得の可能性を検討します。
5.商標の選定時に気をつけたいポイント
類似の商標がすでに登録されていないかを調査します(先行商標調査)。他社と紛らわしくない、かつ覚えやすい名称の選定が成功の鍵です。
6.商標出願の流れと専門家の活用
商標の出願は、特許庁に申請し、審査を経て登録となります。出願には区分、商品・役務(サービス)ごとの指定が必要です。出願後は、特許庁で、登録要件を判断されます。先願・先登録商標との商標(外観(見た目)、称呼(呼び名)、観念(意味合い))とその使用対象(区分・商品役務)を総合的に判断して、登録の可否を判断されます。知的財産の専門の弁理士を活用しましょう。
7.商標権取得後にすべきこと
商標権は原則10年間有効ですが、更新登録手続をすることで何度でも延長可能です。権利を取得しても、商標を使用し続けなければ「不使用取消審判」で取り消される可能性があります。商標の使用管理(ロゴの一貫性やマニュアル整備など)を社内で徹底することが重要です。
8.商標トラブルを避けるために
他社の商標権を侵害しないよう、J-PlatPat等で確認を行います。類似商品や競合他社の動向にも注意を払い、模倣への対策を講じましょう。万一、警告書や異議申し立てが届いた場合は、速やかに弁理士に相談しましょう。
9.海外展開を見据えた商標戦略
越境ECや海外店舗展開には、海外での商標保護が欠かせません。各国の商標制度に応じて、早めに出願準備を進めます。マドプロ(マドリッド協定議定書に基づく国際登録制度)を活用することで、複数国への同時出願が可能です。
10.まとめ
商標は「守り」だけでなく「攻め」にも使える資産です。商標は、ただの権利ではなく、営業戦略や資金調達、企業価値向上にも貢献します。中小企業こそ、限られた資源でブランドを守り育てるために、商標を有効活用すべきです。
将来のトラブルを防ぎ、持続的成長を目指すためにも、早期かつ戦略的な商標対応を始めましょう。

商標権のイメージ と 権利の及ぶ範囲

出願から登録までの手続の流れ
出典:特許庁 事例から学ぶ 商標活用ガイド(2019年版)
https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota-info/panhu.html
文責 尾関眞里子
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